機能が低下すると毒素が身体に溜まって血液が壊れやすくなり、赤血球の寿命も短くなるといわれています。また、透析患者さんは腎臓で造られる造血因子エリスロポエチン(EPO)の産生量も低下しています≪腎性貧血≫。それに、毎回の透析操作で捨てられる血液も『塵も積もれば山となる』で決して少なくはないと思われます。その他にも、食欲がなかったり、逆に食欲はあっても体重増加を気にするあまり食事量を減らすなどして低栄養となり、貧血になっている場合もあります。これらの理由で透析患者さんは常に貧血状態におかれています。
“きちんと食事をして、適度に身体を動かして、しっかり透析をすること”が貧血改善の王道です。もちろん、薬物療法としてもエリスロポエチン製剤(ネスプ、エポジン等)の登場や鉄剤の有効投与により、輸血に頼らなくても貧血治療が効果的に行なえるようになりました。
貧血に関する主な血液検査と透析患者さんの目標値 | |
透析患者さんの目標値 | |
ヘモグロビン(Hb): 赤血球内にある血色素蛋白で、鉄と結合しており、体の隅々に酸素を供給しています。 |
10~11g/dl (若くて活動性の高い人の場合…11~12g/dl) |
ヘマトクリット(Ht): 血液全体に占める赤血球の割合を示したものです。 |
30~33% (若くて活動性の高い人の場合…33~36 %) |
血清鉄: トランスフェリンという蛋白質と結合している鉄。鉄が不足していると、どんなにエリスロポエチン製剤を投与しても貧血は改善しません≪鉄欠乏性貧血≫。 |
男性 60~200μg/dl 女性 50~160μg/dl |
血清フェリチン: 肝臓や脾臓などで貯蔵されている鉄が血液中に出て来たもので、貯蔵鉄の量を示す指標となります。しかし、炎症や感染等がある場合も血清フェリチン値は上昇します。 |
100~400ng/ml |
HbやHtが高すぎると狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の増悪やシャント閉塞、脳血管障害の危険性が高くなります。逆に低すぎると立ちくらみや息切れ、頻脈、心不全症状を引き起こします。目標値内で安定させたいですね。